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第48話 キティちゃん・・・ごめんね
それはキティちゃんのパズル絵本だった。この間、ブックオフで見つけて、持ってきてあげたものだったが、その日はそれが見当たらなかった。「ね、キティちゃんのパズル絵本はどこにあるのかな?}とニーニに聞いても、「しらない」とか、「だいじょうぶだよ。いいから、はやくあそぼ」などと言うばかりだった。私は「変だねー」と言いながら、あちこち探したけど、見つからない。

しばらくしてから、私が何気なく、「あーあ、キティちゃんかわいそうに。きっと何処かでさみしがってるよ。早く探しに来てー、って泣いてるよ」と言ったり、「あ、キティちゃんが『ニーちゃん』って、呼んでるよ」などと、オモチャ遊びをしながら言っていると、そのうちニーニの横顔が心なしか真剣みを帯びてきた。

それからニーニは不意に立ち上がると、トコトコと廊下を走っていく。後から付いて行ってみると、ニーニは、例のお気に入りの狭いスペースの中へと入って行った。そして、書棚の前にチョコンと座り、そこから一冊取り出して、私のほうに差し出した。「なあんだ、ここに置いてたの?」と私はビックリ!

また部屋に引き返してから、ニーニは今見つけてきたキティちゃんのパズル絵本を、テーブルの上に置いてお座りすると、「はやくパズルやろう」とは言わずに、黙ったままで、そっと両手で顔を覆っている。そして、そのまま頭を下げて、祈るような格好で何やら呟いているのだった・・・。

一体何をしているのかな・・・と耳を澄ますと、「ごめんね、ごめんね・・・さみしかった?」と、キティちゃんに語りかけているようだ。そんな姿につい笑みがこぼれてくる。(^-^)

でも、気がつくと、何だかニーニは泣いているみたいに、ヒクヒクと顔を震わせているのだ。「ニーちゃん、泣いてるの?」と、そっと声をかけると、ニーニはゆっくりと顔をあげて、頬にかかった髪を手で払うようにしながら、小さく「うふっ」と、照れたように笑ったのだった。(*^。^*)
第47話 トマトてんごくにいってきまーちゅ
ママが高校生のころに飼っていた猫は『トマト』というらしい。その愛猫は、ママがパパと結婚式を挙げる少し前に、突然姿を消してしまったのだという。その時のママの悲しみようは相当のものだったらしい。

そのことをニーニにも語って聞かせていたようだ。『トマト』は、今天国にいて、死んだおじいちゃんと犬のケンタロウと一緒にいるんだよ、というふうに教えられているようだった。ニーニは、まだ幼いから、「天国」がどういうところなのかとか、「死」とは、どういう意味なのかとか、ほとんど理解していそうには思えない。

その日、いつものように一緒に遊んでいるときのことだった。ニーニは四つん這いになって、「ニャーオ、ニャーオ」と、猫の鳴き声を真似して、「トマトてんごくにいってきまーちゅ」などと言いながら、ハイハイをして部屋から出て行った。そして、すぐにまたハイハイをしながら戻ってくると、「ただいまー。トマトてんごくにいってきまちた」などと言っている。

そんなところをママに見つかったら、生真面目な性格だから、きっと「虹!そんなこと言うんじゃないの!天国に行ったら、もう帰ってこれないんだよ、もう、ママとパパに会えなくなるんだよ!」と、ムキになって言うことだろう。実際そう言ってニーニをたしなめているところに、出くわしたことがあるのだから・・・。

でも私は、そんなニーニを見て、「あら、お帰りなさい。トマトちゃんは元気にしてた?」なんて言ってしまう。だけど、『天国ごっこ』なんて、よくないかな・・・と、ちょっぴり反省・・・。\(-o-)/
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